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ATC便り

ATCとは何か。8,000名を超えるお客様の声からたどる、この場所の物語

こんにちは、ATC経営戦略室のロバートです。今回は、いつもの記事とは少し違う書き方になります。

今年の7月から8月にかけて、ATCでは来館者の皆さまにアンケートへのご協力をお願いしました。回答してくださった方は、8,000名を超えています。そのなかには、こちらが用意した質問の枠を超えて、ご自身の思い出やエピソードを書き添えてくださった方も多く、そうした記述は5,000件以上にのぼりました。

すべてに目を通しました。正直に言うと、何度か手を止めました。ある一文を読んで、しばらく画面を見つめたままになる。そんな瞬間が何度もありました。

今日は、その言葉たちを借りながら、ふたつのことについて書こうと思います。ひとつは「ATCとは何か」という、あまりに基本的で、だからこそ普段は誰も正面から答えないような問いについて。もうひとつは、少し個人的な話です。

海辺から見たATCの外観、O's棟とITM棟
8,000名を超えるお客様が、それぞれの時間を重ねてきた場所です

ATCとは何か。8,000名を超えるお客様の言葉から

経営戦略室でこれからのATCについて話し合った際、ブレストのなかから、こんな「ありたい姿」が生まれました。「世界中から人が集まり、感動と驚きが生まれる場所」。英語では、こう表現しています。「Where the world comes together, wonder begins.」

少し理想的に聞こえる言葉かもしれません。ただ、今回、8,000名を超えるお客様の声を読んで、はじめてこの言葉が、皆さまが実際にATCで重ねてきた時間とつながったような気がしました。

ATCというと、イベントを思い浮かべる方も多いかもしれません。もちろんイベントは大切な入り口です。トミカ博、ジブリパーク展、ダンスフェス。多くの方が、最初はイベントをきっかけにこの場所を知ります。けれど、アンケートに綴られていた言葉の多くは、イベントが終わったあとの時間についてでした。

ある30代の男性は、こう書いていました。

「浪人時代、息苦しかった時、誰もいないとこ静かな広い場所に行きたくて予備校をサボって来たことがあります。いまでもその時のことは鮮明に覚えてます」

30代・男性(同伴:一人)

イベントも、チケットも、特別な理由も何もない日のATCが、この方にとって大切な場所だったのかもしれません。館内で働く方からも、似たような声がありました。

「たまたま夫と同じ場所に勤めているので、時間が合う日は一緒にATCに入っているカフェやレストランで昼ごはんを食べます。海を眺めながらどこのレストランに行くか話す瞬間が好きです」

30代・女性(勤務先:ATC)

特別な日でなくても、ここで過ごす時間を大切にしてくださっている方がいます。そして、やはり多く綴られていたのは、人と人との物語でした。

ある40代の女性は、こう振り返っていました。

「27年前くらいにATCで働いてたら、今の主人からナンパされて、15年後再会して結婚したという思い出の場所です」

40代・女性(同伴:家族)

別の50代の男性も、似た話を寄せてくれました。

「20代のとき、ここで働く嫁をナンパした思い出の場所です。ここがなければ今の家族はないといっても過言ではありません」

50代・男性(同伴:家族)

なかでも、ある40代の男性が綴ってくれた一文は、何度も読み返しました。

「娘がまだ小さい頃に南港ATCへ遊びに行ったことがあります。当時はまだ歩くのも今ほど速くなくて、広いATCの中を手をつないで歩いたり、海を見ながら『あそこに船おるで』と一緒に探したりしていました。それから何年か経って、また娘とATCへ行ったとき、建物や海の景色は昔とあまり変わっていないのに、娘はいつの間にか自分より先を歩いて、『こっちやで』と逆にこちらを呼ぶようになっていました。昔は迷子にならないように娘の背中を追いかけていたのに、今は成長した娘の背中を少し後ろから見ている」

40代・男性(同伴:家族)

建物は変わらないのに、隣を歩く人だけが少しずつ大きくなっていく。ATCという場所が大切にしていくべきものは、案外こういうことなのかもしれません。

「亡き父と海沿いを散歩した」と、たった一行だけ残してくれた方もいました。多くを語らないその一行に、かえって胸をつかれました。

仕事に関する言葉にも、共通する何かがありました。ある30代の女性はこう書いていました。

「今日は息子が就職活動の為、商船三井さんふらわあのオフィスに同行しました。数年前は好きなアニメの企画展に行きたいとこちらに遊びに来たのになぁ、と少し胸が熱くなりました」

30代・女性(同伴:家族)

ある30代の男性は、こう続けます。

「毎年子供と来れることを楽しみに、仕事を頑張ろうという気持ちにさせてくれます」

30代・男性(同伴:家族)

海があること。30年という時間が積み重なり、かつて子どもだった方が、今はご自身のお子さまの手を引いてここに戻ってくること。そして、ここでしか出会えないイベントやカルチャーがあること。この3つが重なり合ったとき、ATCはただの商業施設ではなく、人生の節目が刻まれる場所になるのだと思います。

「世界中から人が集まり、感動と驚きが生まれる場所」。この言葉が指しているのは、きっとイベントそのものだけではありません。イベントをきっかけに、ここに集まった皆さまが、それぞれの時間を重ねていく。その積み重ねのなかに、私たちがブレストで思い描いた「ありたい姿」があるのだと、8,000名を超えるお客様の言葉を読んで、あらためて思いました。

わたしにとってのATC

ここから先は、少し個人的な話です。

わたしが初めてATCを訪れたのは、去年の2月でした。正直に言うと、最初は少し戸惑いました。O’s棟とITM棟という2つの棟、複雑に入り組んだ吹き抜け。どこに何があるのか、なかなか覚えられませんでした。

それでも、建築そのものが持つ力には、最初から圧倒されました。以前の記事で、ATCが「ドリームコア」と呼ばれていることを書きましたが、あの記事を書きながら、初めてこの場所に足を踏み入れたときの感覚を、少し思い出していました。あの日の印象は、今でも消えていません。

ATC館内の吹き抜けと連絡通路
初めて歩いたときの感覚は、今でも覚えています

けれど、しばらくここで働くうちに、少しずつ考えが変わっていきました。建築も、海の景色も、大きなイベントも、確かにATCの魅力です。それでも、それらすべてを形にしているのは、結局のところ、ここで働く人たち、ATCに来館される人たちなのだと気づいたのです。人の思いや営みが加わることで、ATCという場所の魅力が生まれているのだと思います。

春に書いた記事でも触れましたが、ウミエール広場でのゴザの無料貸出は、ひとりの社員の思いつきから始まりました。派手な企画でも、大きな予算がついた施策でもありません。それでも、実際にゴザを広げて海を眺めた方々から、想像を超える数の感想が届きました。小さなアイデアが、誰かの一日を少しだけ豊かにする。そのことを、すぐ近くで見てきました。

去年の大阪・関西万博の時期は、正直に言うと、目が回るほど忙しい日々でした。それでも、あの慌ただしさのなかで感じたことがあります。ATCという場所を日々支えているのは、建物や立地だけではなく、そこに関わる人たちだということです。忙しさのなかで誰かが思いついた小さな工夫が、次の企画の種になる。誰かが誰かに刺激を受けて、また新しいアイデアが生まれる。ここで働いていると、そういう瞬間に何度も出会います。

「世界中から人が集まり、感動と驚きが生まれる場所」。この言葉がブレストで生まれたとき、正直なところ、少し遠い理想のようにも感じました。けれど今は、少し違う読み方をしています。ここに集まるのは、来館者の皆さまだけではありません。ここで働くスタッフも、テナントの皆さんも、それぞれが少しずつ持ち寄ったものが重なって、この場所はできています。次にどんなインスピレーションがここから生まれるのか、正直、わたし自身にもまだ分かりません。それでも、その芽はきっと、この積み重ねのどこかから育つのだと思います。

また、ウミエール広場にゴザを

少し気の早い話を、もうひとつだけさせてください。この春、ウミエール広場で試験的に実施したゴザの無料貸出は、5月末で一区切りとなりました。それでも、涼しくなってきたこの季節にこそ、また戻ってきてほしいという声を、社内でもよく耳にします。正式な発表はまだですが、この秋、もう一度あの広場にゴザを広げられたらと、ひそかに考えています。

夏の次に、ATCで始まること

夏の連載でも少しお伝えしましたが、この秋のATCも、すでに賑やかになりそうです。9月6日(日)からは「第39回 ATC咲洲ダンスフェス」の予選が始まります。9月13日(日)には、フラやポリネシアンダンスのチームが集まる「ATCシーサイドハワイアンフェスティバル」が、ATC海辺のステージで開催されます。

そして10月には、咲洲こどもEXPO 2026も控えています。夏が終わっても、この場所の賑わいは、形を変えながら続いていくようです。

長くなりました。今回は、いつもの記事とは少し違う書き方になりましたが、8,000名を超えるお客様の言葉に触れて、どうしても書き残しておきたくなりました。

この記事を読んでくださっているあなたにも、もしかしたらATCにまつわる、小さな思い出があるかもしれません。次にここへ来たときは、その続きを、少しだけ増やしていってもらえたら嬉しいです。

R

ロバート

経営戦略室

8,000件のアンケートを読み終えるのに、思っていたより長い時間がかかりました。それでも、この場所で働く理由を、あらためて教えてもらったような気がしています。

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